YuukiYg's Blog

備忘録

読書メモ:理科系の作文技術

読んだ本

https://amzn.to/4j99Qwl

01. 仕事の文書の心得

必要なこと「だけ」をもれなく記述

読者に伝えるべき内容が、事実(状況含む)と意見(判断や予測を含む)に限られていて、心情的要素を含まないこと。必要な事は漏れなく記述し、必要でない事は1つも書かないこと。

「読者」に必要のない「感想」

情報意見の伝達だけを使命とし、心情的要素を含まないこと。つまり、原則として「感想」を混入させてはいけない。

「柔らかさ」も必要とされていない。文章の「やわらかさ」を気にかけることで、「あいまいさ」が含まれてしまう可能性が高まる。

読者が誰であり、その読者はどれだけの予備知識を持っているか、またその文書に何を期待し、何を要求するだろうかを十分に考慮する必要がある。

一文書一主題

複数の主題が1つの文書に混入すると、読む相手に与える印象が散漫になり、文書の説得力が低下する。

例えば、ある調査の報告書を書くときに、本来の目的以外のことで、重要な情報が得られたときには、それを調査報告書の本体に書き込むのではなく、本体と分離できる付録にするか、あるいは別の報告書にまとめた方が良い。

目標規定文のすすめ

初心者は、本文を書き始める前に、まずは自分がその文章の中で主張するつもりのことを目標規定文としてまとめてみると良い。

目標規定文の例:「このレポートでは、ランダムな変動を考慮に入れても、1990年代以降、冬の平均気温が上がっていることを示す」

目標規定分は、執筆の途中で材料の取捨選択に迷った時も、判断を助けてくれる。書き進めるうちに目標を修正する必要が出てきたら、その時は目標規定文を書き直し、本文も最初から書き改めること。

02. 文章の組み立て

重点先行主義

読まれるためには、「内容の重心」を前にする。 仕事の文書は全て「重点先行主義」で書くべき。

書き出し(リード)を読めば、文書に述べてあり、最も重要なポイントがわかるように配慮することが大切。

情報の伝達順序は「概観から細部へ」

まず、大掴みの説明をして、読者に概観を示してから、細部の記述に入るべき。文章の冒頭の短く要を得た記述によって概観をつかめれば、読者にとっては、細部の記述を理解・吸収することがとても容易になる。

記述順序の原則

第一の原則は、書くべき中身を分類できる場合には、その分類に従って、記述を進めること。 例えば、映写装置について使い方を説明するなら、照明系、撮影系、再生系のように「機能別」に、使われている材料の特性を書くなら、温度依存性、圧力依存性など「性質別」になる。

第二の原則は、分類した項目の中での説明、あるいは分類できない場合の説明に関しては、時系列または空間的な配列に従って、記述順序を考えてみる。空間的な配列に従った順序と言うのは、例えば絵画の展覧会。展示室が複数あれば、先に入る部屋は、どこか、絵は左右どちらの壁側から観るかなど、順序を明示する必要がある。

順序の原則を決めたら、それを一定に保つべし。 ①どういう順序で書くかを思い、定めてから書き始め、途中でその原則を変えないこと。 ②どうしても原則を守れなくなったら、いさぎよく方針を立て直し、最初から書き直すこと。

03. 文章の構成

論理展開の順序

例えば、研究者が1つの結論にたどり着いたときの道筋が最短経路であることはむしろ例外的で、大抵は結論から振り返ってみると、もっとわかりやすい道が見つかるはず。 論理の展開は、自分がたどった紆余曲折の道をそのまま伝えるのではなく、最も簡明と思われる道(順序)に沿って書くことが大切。

文章の構成の重要性

具体的な構成案の作り方は、 ①目標規定文をにらみながら ②集めた材料とそれについての考察を ③技術の順序・文章の組み立ての原則論を念頭に置いた上で最もすっきりと筋の通った形に配列・構成する

文章の価値を決めるのは第一に内容であるが、文章の内容として、非常に重要なのは、文章の構成である。つまり、何がどんな順序で書いてあるのか、その並べ方が論理の流れに乗っているのか、各部分がきちんと連結されているのか。

「構成表」の作り方

大きな紙に構成表を書いてみる。 大切なのは「必要な項目を落とさないこと」「構成表の同じ段落には、同じ格のものが並ぶようにすること」

パラグラフを満たす条件

パラグラフとは、長い文章の中の一区切り(段落)であって、原稿を書くときは、パラグラフが変わるごとに一字下げで書き始める。

パラグラフは、内容的に連結された複数の文の集まりであり、全体としてある1つの「トピック(小主題)」に対して1つのこと(考え)を言うものである。

パラグラフには、そのパラグラフの中で、何について何を言おうとするのかを、概論的に述べた文が含まれるのが一般的。これを「トピックセンテンス」と言う。

パラグラフの例:「A君は根っからのスポーツマンだ。夏は水泳、冬はスキー、春と秋はテニスと、日焼けのさめる間がない。一番年季を入れたのはスキーだという」 上記の文章において「A君は根っからのスポーツマンだ」がトピックセンテンスに当たる。

04. 脱・日本語の文章

日本語の構造と「逆茂木型」の文章

日本語では、いくつかのことを書き並べる時、その内容や相互の関連がパラグラフ全体を読んだ後で初めてわかる (極端な場合には、文章全体を読み終わって初めてわかる) 場合が多い。英語ではこれは許されない。一つ一つの分は、読者がそこまでに読んだことだけによって理解できるように書かねばならない。

①「逆茂木型」の文章を書いてはいけない。 ②少々くどいと思っても、論理の鎖の環を省いてはいけない

「逆茂木型」の文章の解消

日本人が逆茂木型の文章を書きやすい根本原因は、修飾句・修飾節前置型の日本語の構造にある。英語では長い修飾句・修飾節は、修飾対象の後に来るのに対し、日本語では必ず前置される。これが文章の構成にも反映されてしまう。

逆茂木型の文章にならないようにするには、次の点に注意すること。 ① 1つの文の中には2つ以上の長い前置修飾節は書き込まない (大枝を減らす) ②修飾節の中の言葉には、修飾節をつけない(枝分かれを減らす) ③文または節は、なるべく前とのつながりが理解できるような言葉で書き始める (幹とかけ離れた言葉で始まらないようにする。)

明確な主張のすすめ

曖昧な点を残さずに書くことが何より大切。多少ぼかしておく、いわば余地を残しておく書き方はNG。文を書くたびに「この文は正確に言うと何を意味するか」を自問するべき。もしこの問いに答えられなければ、その分は省いてしまうほうが良い。

日本人ははっきりし過ぎた言い方、断定的な言い方を避ける傾向が非常に強くあるが、仕事の文書を書く際にはマイナスに働く。

欧米人は論説の中で何事かを述べる際には、日本語の「であろう」「と言って良いのではないかと思われる」「と見て良い」「と考えられる」といった緩衝性のある表現は決して使わない。 仕事の文書においては、とことんまで突き詰めた明確な表現が必要となる。

「日本語らしくない」日本語

仕事の文書を書くにあたっては、曖昧な責任回避的な表現は避けて、「自分は〜と思う」「〜と考える」と書くべき。

ほぼ、約、ほど、ぐらい、たぶん、ような、らしい、言ったようなぼかし言葉を入れたくなったときに、それが本当に必要かどうかを吟味する習慣をつけること。仕事においては、こうした「日本語らしくない」、明確な日本語を使うことが大切。

曖昧な表現は、責任を回避する以外に何も生み出さない。それはつまり、仕事に真剣じゃないのと同じこと。

05. 「事実」と「意見」

事実と意見の区別

仕事の文書では「事実」と「意見(判断)」の区別を明確にすることが重要。

事実について記述する際の注意点

  • ①その事実に関して、書く必要がある事は何かを十分に吟味する(書く必要がない事は一言も書くべきではない)
  • ②ぼかした表現に逃げずに、できるだけ明確に書く
  • ③できるだけ名詞と動詞で書き、主観に依存する修飾語を使わない
    • 仮にその文全体が事実の記述になっていても、文中に「便利な」「優れた」などと言う修飾語が入ると、事実の客観性が損われる。

事実と意見を書き分ける

仕事の文書を書く際には以下を注意する。 ①事実を書いているのか、意見を書いているのかをいつも意識して、両者を明らかに区別して書く。書いた後で、逆に取られる心配はないかと入念に読み返す。 ②事実の記述には、意見を混入させないようにする。

事実の記述には、一般的ではなく特定的であるほど、また抽象的でなく具体的であるほど、情報としての価値が高く、読者に訴える力が強くなる。

文は短く、格は正しく

仕事の文書において、一文は「短く、短く」と心がけて書くべき。長い文章は読み返さないとわからない構造のものが多いため、とにかく短くすることが大事。

書きたいことを整理するポイント ①まず書きたいことを一つ一つ短い文にまとめる。 ②それらを論理的につないでいく(つなぎの言葉に注意) ③いつでも「その文の中では何が主語か」をはっきり意識して書く

仕事の文書では「格の正しい文」を書くように気を配る必要がある。格の正しい文とは、言葉同士の関係がきちんと保たれている文のこと。

例:

  • 「私はこの点を考えると○○氏が提出したモデルは、現象を単純化しすぎている」と言う文章は、「と思う」と付け加えないと格が正しくない。「私」が主語なので。
  • 「ここで問題となるのは、端子容量が大きすぎると発振が停止したり不安定になったりする。」と言う文章は「ことである」と付け加えないといけない。「問題となること」が主語なので。

あるべき言葉が脱落していたり、主語が途中で入れ替わるねじれた文にならないよう、格の正しい文を意識するべき。

「誤解できないように」書く

「理解できる」かつ「誤解できない」ように書くことが大切。注意しないと、複数の意味で読める分になってしまう。とにかく、1つの文を書くたびに、読者がそれをどういう意味に取るだろうかと意識する癖をつける。

例:「黒い目の、綺麗な、女の子」と「黒い、目の綺麗な、女の子」では意味が変わる。

読みやすさへの配慮

  • 字面は白い方がいい
    • 文章をぱっと見たときに漢字ばかりがつながっていると全体が黒く、読みづらい印象を与える。常用外の読みづらい感じはあまり使わず、その後に感じが続きやすい接続詞や福祉などもひらがなにした方が良い。全体を見て、ある程度白さが見えるようにバランスを取るべき。
  • 受け身の文はやめる
    • 「〜される」「〜と思われる」「〜と考えられる」などの受け身の文ではなく、能動態で書いた方が読みやすくなるばかりか、文も短くなる。
  • 並記の方法を有効に使う
    • 条件、その他を並べて書くときは、番号を打って「これと同格の内容がいくつか続きますよ」と予告する方が親切。