A little bit of everything

元・情報系大学院生の備忘録

読書メモ:教養としてのワイン

フランスワインの世界

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言わずと知れたワイン帝国・フランス

ジュリアス・シーザーがワイン帝国フランスを礎を作った?

ワインの歴史は6000年も7000年も前と言われている。
ローマ帝国の政治家であり軍人のジュリアスシーザーが、勢力をヨーロッパ各地に拡大していく中、痩せた土地でも栽培が容易なぶどうの特徴を生かし、遠征の先々でぶどうを植えて、ワイン作りを伝えていった。ブルゴーニュシャンパーニュ、ローヌ、南仏など、ワインの有名な地域はローマ軍の遠征先と一致する。


一人当たりのワイン消費量が世界一は「バチカン市国

カトリック教会の総本山であるバチカン市国は、一人当たりのワイン消費量が世界一。これはイエスキリストが最後の晩餐で、「ワインは私の血である」と言う有名な言葉を残したためである。単なるぶどうから作られたアルコール飲料ではなく、「聖なる飲み物」として、申請で貴重なものとして扱われるようになった。

若い樹よりも古い樹からとれたブドウのワインが高評価

ワインによっては「VIEILLE VIGNE(ヴィエイユ ヴィーニュ)」と書かれたラベルが貼られたワインがあるが、これは「樹齢が高い樹からとれたぶどうを使っている」と言うことを表している。大体樹齢30年以上を「古い」と定義しているらしい。

フランスでは厳しい法律でワインを守っている

AOC法 (原産地統制呼称法)

ブレンドOKのボルドー、NGなブルゴーニュ
ブルゴーニュブレンドに厳しいのは、それぞれの土地の特性をワイン作りに生かそうとした結果である。もともと海底にあったブルゴーニュ地方は、土壌の養分や鉱物が土地によって大きく異なり、畑ごとに特性の違いが如実に現れる。またブルゴーニュでは小高い斜面に葡萄畑が広がるため、畑が面している方角によっても日照量が異なり、ぶどうの出来が大きく左右される。

テロワール (ぶどうが育つ自然環境)が最も優れているのはロマネコンティの畑だと言われる。ここではピノノワールが育つための最高の条件が整い、土壌の質、畑の向き、法衣店長江など、どれをとってもパーフェクト。しかし、ロマネコンティとわずかに道を挟んだだけの別の畑で作られるワインは、品質も価格も全く異なる。目と鼻の先ですら、その違いは歴然。

最高級ワインの総本山「ボルドー地方」

  • フランス南西部に位置する最高峰の赤ワインの産地
  • ボルドーの土壌は砂利質で土地は痩せているが、水はけが良く、ぶどうの栽培には最適。気候と日射量もぶどうの生育にはぴったり
  • 町中を流れているガロンヌ川のおかげで、ワインの輸送にも便利な土地
ボルドーワインを基礎を築いたナポレオン三世

1855年のパリ万博で、ナポレオン三世によってメドックの格付け」が行われた。ボルドーメドック地区(フランスの中でも高級ワイン生産地)にあるシャトーを格付けし、その優劣を決めた。
700〜1000のシャトーがエントリーしたが、最も高い1級に選ばれたのは4つ。


ボルドー独自のしきたり「ボルドープリムール」

ボルドープリムールとは、樽の中で熟成させている時から売りに出される「ワインの先物取引」を指す。毎年1万人前後もの世界中のワイン関係者がボルドーに集まる。ワイン関係者たちはお目当てのシャトーと訪問日を決め、シャトーへ出向きテイスティングをする。
ここで出されたワインの評価に世界中が注目する。

ボルドーワインの流通経路

ネゴシアンと呼ばれる卸売業者がいるのが特徴的。

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神に愛された地「ブルゴーニュ地方」

畑の格付けはわずかに4つ

ブルゴーニュには、ボルドーのような地区ごとのシャトーの格付けもない。畑にわずか4つの格付けがあるだけ。

グランクリュは、ブルゴーニュ全体の畑のわずか1%。グランクリュの畑で作られたワインは、ラベルにもその畑の名前が記される。ロマネ・コンティもそのうちの1つ。(ちなみにロマネ・コンティは葡萄畑の名前)


ブルゴーニュが神に愛された地と言われる所以「コート・ドール地区」

コート・ドールは「黄金の丘」という意味がある。
かのロマネコンティもここで作られる。
ロマネコンティの畑には、神から与えられた証として十字架が建てられ、畑の守り神として讃えられている。

www.google.com

この村は今も変わらず葡萄畑と醸造所、そして教会しか存在せず、道路がかろうじてアスファルトに整備された程度で、ほとんど何百年も手が加えられていない。
ロマネコンティは多くの歴史上の人物も魅了した。病弱だったルイ14世は、薬の代わりにスプーンいっぱいのロマネ・コンティを毎日飲んでいたほど。

ブルゴーニュ地方 ボジョレー地区

ガメイ種というぶどうで作られる熟成のいらない早飲みワインが有名なボジョレーは、ブルゴーニュのほぼ半分に相当する広大な土地を持ち、膨大な生産量を誇る。

ボジョレーヌーボーの生産地。ボジョレーヌーボーは、ボジョレで作られるヌーボー(新酒)と言う意味。

ボジョレーの最初の出荷日が解禁日と呼ばれ、11月の第3木曜日。日本では時差の関係でフランスを差し置いて世界で1番早くボジョレーが飲めるため、バブル時代には日本中がボジョレーに熱狂し、大きな話題を集めた。ボジョレーで生産されるワインの半数は国外に輸出されるが、ボジョレーヌーボーに関してはほとんどが日本に輸出している。ちなみにヌーボーをお祝いするのは日本だけの風習

ブルゴーニュ地方 シャブリ地区

ブルゴーニュでも1つだけぽつんと離れた場所にあり、白ワインで有名な産地。ここは太古から白ワインの産地として運命づけられていたような、辛口白ワインを作り出す条件を全て兼ね備えた土壌を持っている。

ジュラ紀に海の底にあったシャブリ地区の土壌は、今でも牡蠣などの貝殻の化石が出てくる石灰質。ミネラルがたっぷり含まれている土壌で育つシャルドネからは、他の産地では決して表現できない、酸味が強くキレの良い白ワインが生まれる。

シャブリは牡蠣や魚介類との相性も抜群で、冷やしたシャブリをこれらに合わせると、不思議とその生臭さが消え、ミルキーの味わいが引き立つ。まさにマリアージュ! シャブリの畑には以下の4つの格付けがある。

シャンパンの聖地「シャンパーニュ地方」

シャンパンは戦いに勝利したときに飲む価値があり、敗北したときに飲む必要がある
ナポレオン・ボナパルト

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シャンパンを名乗るの難しすぎる問題

シャンパンを名乗れるのは、フランスのシャンパーニュ地方で作られ、かつ法律に規定された条件を満たしたものだけ。

例えば、シャンパンの要である発泡は、瓶内二次発酵されたものだけに限られる。瓶内二次発酵とは、瓶詰めしたワインに糖分や酵母加えて再び発酵させ、炭酸を作り出す方法。ワインに炭酸を入れたり、タンクで発泡させたものを瓶詰めしたものはシャンパンとは認められない。さらに、使用できるぶどうの品種(ピノノワールピノムニエ、シャルドネ)や熟成期間、ぶどうの収穫量、最低アルコール度数なのも定められている。

シャンパンの誕生

1638年にシャンパーニュ地方で生まれたピエールペリニヨン修道士は、修道院でワイン係を命じられ、うっかりワインを貯蔵庫に入れ忘れ、外に放置してしまった。数ヶ月後、そのワインの瓶から泡が立ち上がっているのを見つけた。寒い冬の間、外に置き去りにされた微生物の活動(発酵)が止まっていたワインが、春の訪れとともに気温が上がり、再び微生物が動き出したことによって瓶内二次発酵が起こった。恐る恐る泡の立ち上がりワインを飲むと、実に爽やかでとても飲みやすい味だった。これが後のドンペリニオンであり、最初のシャンパン。



イタリアワインの世界

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フランスとワインで肩を並べるイタリア・生産量世界1位

特徴

  • イタリアのワイン生産量はフランスを抜いて世界1位!
  • イタリアのすべての州でワインが醸造されており、それぞれの土地の土壌や天候の特徴を生かしたワインが作られている。
  • 長い歴史の中で常に小国が分立・対立を繰り返していたイタリアは、それぞれの地域や都市によって文化や歴史的背景が大きく異なる。そのため、地元意識が強く、それぞれの土地に独自の風土や食文化があるように、ワインにも様々な種類が存在する。
  • 土着品種(その土地でしか幸されないぶどう品種)は約2000種類あると推定されている。
    • フランスの品種は約100種類なので、格段に多い。
  • イタリアでは気軽に飲むワインの場合、一般的にマナーやルールは必要ない。
    • プラスチックカップで飲んだりする。
    • グラスや飲み方にこだわる必要はないという懐の深さがイタリアワインの特徴。
    • どれを選んでも飲みやすいイタリアワインは、ワイン初心者でも気後れせずカジュアルに楽しめる。
    • ワイン選びに迷ったらとにかくイタリアワインを選ぶという人も多い。


イタリアの気軽でカジュアルな国民性がフランスに遅れをとった理由?

フランスでは国がワインの質やブランドを厳しく守っているのに対し、イタリアではゆるい管理しかなされていない。それによって質とブランドを担保しきれなかったことが、フランスに大きな遅れをとった理由の1つ。気軽でカジュアルな国民性は、イタリアワインの良い面にも悪い面にも表れている。

  • フランスワイン
    • 王侯貴族の飲み物。
    • 量 < 質の生産
    • 宮廷料理とのマリアージュにこだわった。
  • イタリアワイン
    • 庶民の飲み物。
    • 質 < 量の生産
    • 郷土料理や地方色がつよいイタリア料理とのマリアージュにこだわった。地元で消費されることが圧倒的に多い。


イタリアワイン × 郷土料理 「タマゴが先かニワトリが先か」問題

イタリア各地に郷土ワインと郷土料理が存在するが、同じ土地で作られたワインと郷土料理がマッチしすぎる。
ワインに合わせて郷土料理が発展したのか、郷土料理に合わせてワインが作られたのか、今もワイン関係者が集まるとこの議論がなされるほど。


裏技:簡単なイタリアワインの選び方

肉料理ならイタリア北部のワイン、魚料理ならイタリア南部のワインを選ぶだけでよい。
理由:イタリア北部の郷土料理は肉料理がメインで、南部では魚料理がメインであるため。



スペインワインの世界

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隠れた名品を作り続けるスペイン

特徴

  • スペインはワイン生産量で世界第3位。
    • フランスやイタリア同様に古くからワイン醸造が行われてきた。
  • サングリアの本場
    • もともと美味しくなかったワインを飲みやすくしたのが始まり。
    • 最近はワインにフルーツやジュースを入れてカクテルとして楽しむ人も増えてきた。
  • フランスやイタリアに比べると代表的なワイナリーははるかに少ないが、隠れた名品はいくつも存在する。


ドイツワインの世界

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世界最北のワイン生産地

特徴

  • 世界で最北のワイン生産地に属している。
  • その涼しい気候と土壌の性質を生かした辛口白ワインが有名。
  • 寒い土地であるため果実の糖度が上がらず、アルコール度数が低いのが一番の特徴。

ドイツワインは世界に羽ばたけなかった?

日本で1980年代、ワインと言えばドイツワインだった。
しかしそれ以降はフランスワイン一辺倒になる。その理由はドイツワインの「難しさ」

  • ドイツワインには甘さによりランク付けがある。
    • 一番甘い種類のワインは「トロッケンベーレンアウスレーゼ」というランク。
    • 名前を覚えるだけでも大変・・・。
    • じつはこのラベルの読みづらさがドイツワインが世界に羽ばたけなかった要因だと言われている。とにかく難しい名前が多い。

アイスワインが有名

アイスワインは他の国では生産が難しい貴重なデザートワイン

アイスワインは200年ほど前に偶然生まれた産物
寒波に見舞われたドイツで、完熟したぶどうの房が肌についたまま凍ってしまった。しかし不作続きだった当時のワイン生産者にとっては凍ったぶどうも無駄にできなかった。そこで凍ったぶどうの収穫してワインを作ってみた。すると驚くべきことに、果実味と芳醇な香りが凝縮された甘くておいしいワインができた。これを機にドイツではアイスワインの文化が根づき、ドイツの名産として今日まで作られ続けている。

イギリスワインの世界

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「ワイン消費国」としてワインの世界を支えるイギリス

特徴

  • じつはイギリスはワインの生産は有名ではない。
  • イギリスはフランスの隣に位置しており、ワイン消費量が世界トップクラス
  • ワイン生産で有名ではない理由は環境の悪さ
    • 痩せた土地、日照量も少ない。
    • イギリスは農作物の育つ条件に恵まれていなかった。
    • 唯一育つのはジャガイモや穀物だけ。
    • ぶどう栽培の北限はフランスのシャンパーニュ地方やドイツだと言われており、それよりも北にあるイギリスでは、どうしてもワイン作りに必要な環境を整えられなかった。


そもそもイギリスは隣国にワイン帝国フランスがあるため、イギリス王侯貴族たちも、それが世界の一流品を口にして大満足していた。わざわざ痩せた土地で十分に育たないぶどうを育て、ワインを作る必要がなかった。 そのためイギリスは、ワイン生産国としてではなく、ヨーロッパの一大ワイン消費国として、歴史の中でワインの発展に寄与してきた。ヨーロッパにおけるワイン産地にとって「イギリス国民に見初められる=成功」であった。ボルドーをはじめ現在の世界の名だたるワイン産地の多くは、イギリスに認められることによって名を馳せていった。



新世界

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ワインには旧世界と新世界と言う生産地の区分けがある。

  • 旧世界 (オールドワールド)

    • フランスやイタリアなどの伝統的なワインの生産国
    • その土地のテロワールを生かし、産地による個性を十分に引き出す醸造が行われている。そのためフランスのAOC法のように産地ごとにワイン醸造に規定があり、ぶどうの収穫量、ぶどうの品種、成熟期間等、決められた規定を全てクリアしたものでなければ産地を名乗れない。ぶどう栽培についても多くの規制があり、人工的に手を加える事はワインの個性を失う事と考えられるため、自然に従ったワイン作りのスタイルを維持することがオールドワールドの美学と捉えられる。
  • 新世界 (ニューワールド)

    • アメリカやチリ、オーストラリアなどの新興生産国
    • 土地やぶどうの個性を重視する厳し法律はない。ワインの歴史や伝統がないため、自由な発想でワイン作りが行われ、時代にあったスタイルを追求している。様々なぶどう品種を栽培したり、オールドワールドでは許可されていないブレンディングを行ったり。


アメリカワインの世界

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旧世界のワイン帝国・フランスに勝利した新世界のワイン帝国

特徴

  • 世界第4位のワイン生産国!
  • 最近はアメリカを抜きにしてワインを語ることができない。
  • カリフォルニア州アメリカ全体の90%を占める。ナパやソノマなど高級ワインの醸造地として有名。
    • カリフォルニアがワインの一大産地となったのはゴールドラッシュが理由。
    • 1850年頃、金 (Gold) を求めて世界中の採掘者が一攫千金を夢見てカリフォルニアに集まった。
    • 採掘者たちは思うように金を採掘できず、次第に生活に困窮するようになった。
    • そしてワイン作りの知識を持つヨーロッパ人が、カリフォルニアの広い土地にぶどうの木を植え、金の採掘からワイン生産者へと職を転じた。
    • 十分な日射量が確保できるカリフォルニアの広い土地は、ワイン作りにもってこいだった。夏は暑く、冬は寒いカリフォルニアは、ぶどうの育成にこの上ない最高の環境。


ワインの世界で伝説となった「パリの審判」

1976年の「パリの審判」と呼ばれる伝説のテイスティング大会がある。
ワインのラベルを隠して審査員がテイスティングし、得点をつけるというもの。


  • フランスを代表するムートン・ロスチャイルやオー・ブリオンなど、ボルドーの大物シャトーが勢ぞろいでエントリーされた。
  • 最終的には赤・白ワイン合わせてフランス4種類、カリフォルニア6種類の合計10種類が選ばれ、20点満点で採点が行われた。
  • 審査員はすべてフランス人。
  • 結果:カリフォルニアワインの圧勝
  • 結果を受け止められなかったフランス
    • 「フランス産ワインはアメリカ産と違って熟成を要する。30年後にようやくおいしいワインが出来上がるのだ!」


・・・30年後の2006年にリターンマッチ
ここでもカリフォルニアワインが勝ってしまった。
「パリの審判」で圧勝したカリフォルニア・ナパは、フランスを負かした将来有望な産地として注目を集めるようになった。

チリワインの世界

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「安いのに美味しいワイン」といえばチリ

特徴

チリでワイン作りが発展した背景

  • 19世紀後半にヨーロッパの産地を襲ったぶどう害虫 (フィロキセラ) の大量発生 -> ヨーロッパ各国でワインの生産が不可能に。
  • 被害に見舞われていない土地を求め、チリへと渡って行った。
  • アンデス山脈の傾斜や谷間に広がるぶどう畑は、地形的に害虫が侵入しにくい。
  • 国外から渡ってきた多くの醸造家や地元の人々によってワイナリーが設立されていった。
  • しかし、醸造技術がうまく受け継がれず、質の向上がうまく進まなかった。
  • その結果「安かろう、悪かろう」というイメージが定着し、その地位を長年向上できずにいた。
  • しかし、チリの広いぶどう畑と巨大な販売網に目をつけたフランスのシャトーたちがチリのワイナリーに提携を持ちかけ、その巨大な販売網で良質のワイン販売を始めた。
  • そしてチリには多くの資本が流れ、品質の立て直しや新生ワイナリーの設立が相次いで行われ、「安くて美味しい」というイメージが定着していった。

日本でのワイン輸入量トップはチリワイン

日本ではチリワインは関税が安い。日本にワインを輸入するには15%ほどの関税がかかるが、チリは2007年に日本との間で発行された経済連携協定(EPA)によって、0%の関税で輸入できる。そのため日本では、2016年にはフランスやイタリアワインを抑えて輸入量がトップになった。コンビニに置いてある「アルパカ」や「サンライズ」など、安価なのに安定した品質を保つ銘柄がいっぱいある。


日本ワインの世界

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2015年にようやく始まった日本

特徴

  • 数年前まで日本のワインの評価は「味が薄い」「香りがなくて水っぽい」というひどいもので、海外の評論家からは酷評だった。
  • 薄味の日本食に合わせた軽さが売りだったが、しっかりした味を飲み慣れていた海外の評論家たちは物足りなく感じた。
  • しかし近年は大きく改善されてきている。日本でも2015年にワインの品質とブランドを守る基準が定められ、2018年10月からはその基準が適用されている。
    • 今後は「日本ワイン」と表記するためには100%日本国内のぶどうを使用しなければならない。
    • 産地をラベルに表記する場合も、その地域で育てたぶどう85%以上使用しないといけない。
    • ワイン伝統国の歩んできた道を、ようやく日本も歩み始めた。


そんな日本における最大のワイン生産地は山梨県。大小のワイナリーが80ほどあり、国内の約3割のワインがここで生産されている。最も有名な産地は甲州で、明治時代からワインが作られている。

日本のワインが世界に認められるためには、日本国民のサポートが必要!
ヨーロッパ各国のように、まずは自国民がワインを消費しなければ、その文化が花開くことはない。
ぜひ海外のワインだけでなく、今後は日本のワインにも目を向けよう!



番外編

必ず押さえておきたい6つのぶどうの品種

  • カベルネ・ソーヴィニヨン
    • 世界で最も生産量が多く、ほぼ全てのワイン産地で栽培されている。
    • タンニンを豊富に含み、若い時はアルコール度数が高く、濃厚でしっかりした味わいが特徴。
  • ピノノアール
    • 栽培が難しく、繊細なぶどう。
    • ロマネコンティにも使われるポテンシャルの高い編集。
    • ピノノワールを使う場合、基本的には他の品種とはブレンドせず、単一で醸造させる。
  • メルロー
  • シャルドネ
    • 白ワインの王道品種。
    • 同じシャルドネでも、産地によって味わいが大きく異なる。
    • ブルゴーニュシャンパーニュ地方は涼しい気候で育ったシャルドネからミネラルと酸味が豊富な辛口ワインが作られるし、日射量の多いカリフォルニアやチリはトロピカルフルーツのような味になる。
  • ソーヴィニヨンブラン
    • カジュアルな白ワインから超高級白ワインまで幅広く使用される。
    • 温暖な地域から涼しい地域まで環境の適応力が高いため、産地によって個性が際立つ。
  • リースリング
    • 涼しい気候を好むぶどう。
    • ヨーロッパ北部のドイツを筆頭に、隣接するフランスのアルザス地方など涼しい地域で使われる白ワイン向けのぶどう。
    • 辛口も甘口もある。幅広い。



ワインの味

ワインの味は、以下の5つの要素から成り立っている。

  • 甘み
  • アルコール度数
  • 酸味
  • タンニン
  • ボディー

これらの個性や特徴を見分けるのがテイスティング

甘み・アルコール度数

ぶどうの果汁が発酵して「アルコール」になると、発酵しきれずに残った糖分がワインの「甘み」になる。 そのため、糖分をほとんどアルコールに変えたワインが「辛口」であり、糖分が残れば残るほど「甘口」に近づく。つまり、甘いワインほどアルコール度数は低くなる傾向がある。

酸味

酸味はぶどうに含まれるりんご酸と酒石酸 (しゅせきさん) のことを指す。酸味の高いワインを冷やすほどおいしいとされる。その理由は、ワインの温度が低くなると甘味と酸味が混ざって味がぼやけるため。

タンニン

タンニンはぶどうの果皮と種子から生じるポリフェノールの一種で、渋みを表す。ぶどうの果皮を使わない白ワインには、ほとんどタンニンが含まれていない。

ボディー

ボディーは、ワインの骨格、強さ、重厚感、感覚など、飲んだときの感触を表す。その感触は、フルボディー、ミディアムボディ、ライトボディーと分けられる。明確なボディーの定義や基準は存在せず、飲んだ感触によって表現される。

  • フルボディ
    • リッチでパワフルな味わい。
    • 色も濃く濃厚で香りが高く、飲んだときに口いっぱいに広がる強さがある。
    • タンニンやポリフェノールを多く含んでいるため長期熟成型。
    • カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズを使ったワインがフルボディーと言われる。
  • ミディアムボディ
    • フルボディーとライトボディの中間。
    • サンジョベーゼやニューワールドのピノノワールがミディアムボディーと言われる。
    • フルボディだったワインが熟成とともにまろやかになったものもある。
  • ライトボディ
    • 一般的にアルコール度数が低く、タンニンも少なめ、色も薄いワイン。
    • 若いピノノワールやガメイ種、バルベーラ種などに代表される味わいで、飲んだ感触は軽やかで重厚感は無い。
    • タンニンが少ないため早飲みタイプのワインが多い。



ワイングラスの形状

ワイングラスの形が違うのは、ワインの種類・ぶどう品種により、香りの楽しみ方や空気と触れさせるレベル・適温・口への含み方などが変わってくるため。

赤ワインのグラスは、白ワインのグラスより大きい

赤ワイン用のグラスは、白ワインをグラスよりも一回り大きい。
これは空気に触れさせてタンニンの渋みを和らげるため。
反対に白ワインは、冷たいうちに飲みきれるように小さめに作られている。

ぶどうの種類でグラスが変わる

赤と白の違いだけでなく、産地やぶどうの種類によっても適したグラスが変わる。
主に、舌は味覚を敏感に感じとる位置が異なっているので、ぶどうの種類と味覚の感じる位置によってグラスの形が変わる。

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カベルネ・ソーヴィニヨンのグラスは楕円形で縦に長くなっている。
これはタンニンが豊富で、空気に触れるほどワインが開く(酸化により味わいが変化する)ぶどうの特徴を生かし、口に入るまでの空気に触れる時間を長くして、より芳醇な味わいを表現するため。

ピノノワールのグラスは、丸みを帯びたシェイプで、飲み口の部分が狭くなっている。
ピノノワールは繊細で複雑な香りのニュアンスが特徴なので、ワインが空気に当たる面積を広げつつ、その香りを封じ込めるように飲み口が狭まっているのが特徴。

白ワイン用のグラスは口がすぼまっていないが、これを口に含んだときにそのまま舌全体にワインが広がり、舌の両サイドでしっかり酸味を感じ取れるようにするため。


一方で、シャブリに代表されるミネラルがしっかりしたシャルドネには、酸味を感じる舌の両サイドに直接当たらないように下のすぼまったタイプのグラスを選ぶ。 リースリングは、酸味、果実味、苦味のバランスを感じられるスタイルとなっている。舌先から舌の中央にワインが流れ、果実味をキャッチして香りを楽しめるようなデザイン。

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出典:https://www.winemag.com/2018/10/30/how-to-select-the-right-wine-glass/

薄手のグラスほどワイン美味しく飲める

すべてのグラスに共通しているのは、薄手のグラスほどワイン美味しく飲めるという点。厚いグラスに注ぐと、ワインはすぐに温度が変わってしまうが、薄いグラスワインの温度に馴染むため、美味しく飲める。

テイスティングの手順

  1. 見る
  2. グラスを回す
  3. 香りをかぐ
  4. ひと口含む
  5. 飲む
1.「見る」

ワインの色合いや輝き、清澄度(せいちょうど)を確認する。また、濁りがないかも確認する。濁っている場合は劣化・酸化している可能性もある。白いものを背景にグラスを傾け、色の濃淡の度合いを見る。
赤ワインは、若いワインは紫がかった明るい色合いで、成熟とともにレンガ色えと変化する。ぶどうの種類によっても色に違いがあり、この色の変化や違いからワインの個性を楽しむ。
白ワインは、液面の縁の部分の色によってワインの特徴がわかる。白ワインは、年を追うごとにグリーンがかった黄色から、淡い黄色、レモンイエロー、ゴールド、麦わら色、琥珀色へと変化する。

2.「グラスを回す」

グラスを回して粘着度を確かめる。グラスの内面にワインの滴跡がしっかり残るほど粘着性が高く、アルコールの数が高い。

3.「香りをかぐ」

グラスを傾け香りをかぐ。ワインの香りはアロマとブーケに分けられる。ぶどう本来の香りと発酵段階で生まれる香生「アロマ」と呼び、発行後に樽や瓶の中で熟成中に生まれる香りを「ブーケ」と言う。それぞれが持つ香の個性を楽しむ。

4.「一口含む」

一口だけワインを含み、口の中全体で味わう。舌は箇所によって感じられる味が違う。甘みは舌の前方、酸味は舌の両サイド、タンニンは歯茎、アルコールは喉の奥で、そしてボディーは後味の長さや飲んだときの感触で感じる。

5.「飲む」

最後に飲む。



ワインボトルの形と大きさ

ワインボトルの形状はボルドータイプとブルゴーニュタイプに分けられる。
これらボトルの形状は、生産地ごとに規定があり、許可されていない形状のボトルを販売することができない。

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  • ボルドータイプ
    • 「いかり肩」と呼ばれ、肩の部分が張った形になっている
    • ボルドーワインはタンニンが多く含まれる長期熟成型のため、澱 (おり:タンニンやポリフェノールが結晶化したもの) がたくさん出る。ワイングラスを注ぐ際に、この澱が入らないよう、肩の部分に澱が溜まる怒り肩の形状が好まれる。
  • ブルゴーニュタイプ
    • 沈殿物が少ないので「なで肩」の形になっている。
    • ブルゴーニュでは、古くから「カーブ」と呼ばれる地下室にワインを貯蔵していたが、狭いスペースにボトルを効率よくに保管するためにも、ワインを交互に入れられるこの形状が好まれた。



 ワインの保存の仕方

  • 13度前後の温度を保つ
    • 温度が低すぎるとワインの熟成が遅れ、高すぎるとワインの成分や酸化防止剤が化学反応を起こし変質する。
  • 強い光を当てない
    • 強い光を当てると熟成が早まるので、日光はもちろん蛍光灯の光も注意が必要。
  • 湿度60%以上を保つ
    • 湿度が低すぎるとコルクが乾燥して縮み、その隙間から空気やバクテリアが入ってワインが酸化・変質してしまう。
  • 横にしておく
    • コルクが乾燥しないよう、常にワインと接触させるために横にして保存する。
  • 風を当てない
    • 風が当たるとコルクが乾燥するので風に当てないことも大切。
  • 他のにおいを近づけない
    • 強いにおいのものが近くにあると、そのにおいがコルクが移り、そこからワインの香りが変質することもある。
  • 振動を与えない
    • 振動によってもワインは劣化するので、動かさないことも大切。



 マナー

  • 乾杯ではグラスを当てないこと
    • これはワイングラスにもよるが、繊細な薄手のグラスを使用している場合は勢い余って割れてしまうので、なるべく当てない方が良い。
  • グラスは脚の部分を持つこと
    • 高級なグラスはとても薄くて繊細。
    • ボールの部分を持って、きれいなクリスタルに指紋をつけたり、汚したりするのはマナー違反。
    • ボールを鷲掴みにして飲むと相手に不快感を与えるので、優雅に飲むことを心得ること。
    • グラスに食べたものがつかないようにも注意する。特に脂っこいものを食べたときは、必ずナプキンで口を引き拭いてからワインを飲む。
  • 香りを楽しむ余裕を持つこと
    • ワインを飲む際は2〜3回グラスを回して、香りを楽しみながら飲む習慣をつけよう。
    • 香りを楽しみ、ゆっくりと味わうこともマナーの1つ。
    • ビールを飲むようにがぶがぶ飲んでしまってはダメ。
  • グラスいっぱいにワインを注がないこと
    • ゲストにワインを注ぐ際は、ホスト役の男性が注ぐようにする。
    • 赤ワインを注ぐ量はグラスの半分以下。グラスになみなみ注がないようにする。これはグラスが回しづらくなってしまうため。
    • 白ワインの場合は空気に触れさせる必要がないので適量を注いでよい。例えばフルートグラスにシャンパンやスパークリングワインを注ぐ際は、グラスいっぱいに注いでも良い。
  • 急いでワインを注ぎ足さないこと
    • ワインは空気に触れさせながら香り味の変化を楽しむもの。
    • 少し減ったからといってすぐに注ぎ足すのはNG。
    • 白ワインでも、冷えたワインを継ぎ足すと温度が変化して味が変わる。
    • ただし、ゲストのグラスを空にしてしまうのもマナー違反なので、ゲストがワインを飲むスピードに配慮しながら、タイミングよく注ぎ足すようにする。
  • お酒に強くない場合
    • 一言伝えて少なめに注いでもらうこと。
    • グラスいっぱいに注いでもらって残すのはマナー違反。
    • 2杯目を注がれそうなときは、もう十分なのであればグラスを手で覆うジェスチャーをして断るようにする。
  • テイスティングは味の確認ではなく品質チェック
    • 選んだボトルをテイスティングする場合は、おいしい or まずいではなく、状態をチェックするためであることを試みる。



感想

  • こういう知識って海外のExecutive クラスな方々は必ず知っているらしい。日本はそんなイメージがあまりない。
  • ワインは狙って作ることが難しい。だから美味しいワインは自然が生んだ奇跡の産物として認められているんだなと思った。
  • 知らずに飲むのと、知ってから飲むのでは全然違う!知っていると美味しい!
  • 美味しいワイン作り=ぶどう作りだけじゃない。
    • 人間がコントロールできる部分、できない部分がある。コントロールできる部分を改良していくことで良いワインが生まれる。
    • ワイン以外の要素(グラス、料理、飲む場所、飲む人、etc.)が無いと、「美味しいワイン」は生まれない。
  • モノづくり精神を感じる。